重大事故が”起きなくても”警察は捜査する
ある運送会社の実話です。
運送会社の社長は、自分ではトラックを運転をしていないのに「道路交通法違反」で逮捕されました。
きっかけはドライバーへの職務質問です。
高速道路の路側帯に停車していたドライバーに警察官が事情を聞いたところ、
「仮眠中だった」と回答したことから、警察は「過労運転」を疑って運送会社を捜査しました。
捜査の結果、
・長時間の運行をドライバーに指示して、長時間労働が常態化していたこと
・1ヶ月400時間の拘束時間が数ヶ月続いていたこと
この2つが発覚し「過労運転をドライバーに命令した」として社長が逮捕されました。
通常は重大事故が「起こってから」捜査が入ることがほとんどですが、
このケースでは事故が発生する”前”に、捜査が入っています。
しかも、きっかけがドライバーの「仮眠中」と普通によくある状態で起こっています。
「過労運転」の判断は「改善基準告示」の限度が基本
道路交通法の第75条には過労運転に対する「事業者」への規定があり、
過労運転かどうかの判断基準は「改善基準告示」の限度が基本になります。
「改善基準告示」の中で、特に注意する項目は以下の3点です。
1:1ヶ月の拘束時間←長時間労働で疲労が蓄積されていたか判断
2:1日の休息期間←十分な休養を与えていたかを判断
3:連続運転時間←無理な運転をさせていないか判断
まずこの3つ項目が重要になってきます。ドライバーの労働状況を判断するための、
働いた時間・休息した時間・運転時間をそれぞれ判断できるためです。
もちろん、その他の項目を判断材料にされることもありますが、
とくにこの3つはドライバーの労働管理で重要な指標になります。
道路交通法違反による「捜査や逮捕」の可能性
令和元年の「過労運転」が原因の交通事故は438件と発表されており、
実に1日1件以上、過労による交通事故が起きていることになります。
運送業のドライバーが事故を起こせば、事故原因の特定のために捜査が行われ、
労働時間が調べられます。違反かどうかの判断には「改善基準告示」の限度が、
重要な基準になってきます。
過去の判例では懲役4年の実刑となったケースもあります。
運送業の法務リスクは、車両停止など「行政処分」に注目されがちですが、
道路交通法違反による「捜査や逮捕」の可能性があることも忘れてはいけません。