コラム

中小運送業がこれだけはやっておきたいデジタル化策について:その⑦運転日報

前回のコラムはかなり前ですが、

アナタコとスマホが切り拓く次世代の運行管理

というタイトルで書かせていただきました。なかなか夢があるテーマでしたね。

今回は運転日報についてです。よろしくお願いします。

■ 運転日報のデジタル化率は想像以上に低い
AppLogiのアプリケーション導入前の企業の状況を見ると、運転日報をデジタル化していた割合は、10%以下にとどまっています。

「デジタコが装着されていれば、自動で日報が出力されるのでは?」と思う方も多いかもしれません。しかし、実際には以下の2つの理由から、日報のデジタル化が進んでいないのが現状です。

1.4トン車格未満の車両にはデジタコ装着義務がない
2.デジタコの出力データがそのまま活用できないケースが多い

1つ目はイメージしやすいと思います。4トン以上の車両ではデジタコから日報を出力する運用が可能ですが、4トン未満の車両では、依然として手書きで作成しているケースが大半です。

2つ目はやや複雑です。たとえば、以下のような問題があります:

デジタコの操作ミスにより、内容が正確ではなく日報として使えない

休憩未取得や出庫・帰庫時間が明確に出てしまうため、あえて手書きにして修正(これは本来あってはならないこと)

こうした背景から、**「修正前提の運用」**が常態化してしまっている企業もあり、会社の教育体制やスタンスが問われる課題と言えるでしょう。

■ 運転日報データは“運送業の命綱”
運送業における**「データ」とは、すなわち運転日報のデータ**です。

長時間運転や待機時間、残業時間などの把握・分析はすべて日報に集約されます。これが手書きの場合、データの取得は困難になり、実質的に**「見えない業務」**になってしまいます。

2024年問題に象徴されるように、残業時間や拘束時間、改善基準告示の遵守といった管理項目は年々増加しています。その中でデータがない=対応不能という状況に陥りかねません。

・業務効率の改善
・労働訴訟への備え
・法令順守の証拠(エビデンス)の確保

これらはすべて、「正確な記録」から始まります。

■ まずはどんな形でも“データ化”を
可能であれば、手書き日報からの脱却を今すぐ進めるべきです。方法としては、以下の選択肢が考えられます:

デジタコに正確に入力し、データを活用する

スマートフォンアプリで運転日報を作成する

手書き日報を後からExcelなどに入力してデータ保存する

重要なのは、「まず記録を正す」ことです。正しい時間管理は、そこから始まります。

■ アメリカでは“手書き日報禁止”の動きも
アメリカでは、一部のドライバーに対して手書き日報が禁止されています。

以前は日本と同様に紙による記録が主流でしたが、記録の杜撰さや不正申請が問題となり、2018年4月から州をまたぐトラックには「電子運行記録装置(ELD)」の装着が義務化されました。

これにより、エンジンの稼働・運転時間が正確に記録され、労働時間の不正が不可能になったのです。

■ 義務化で運賃が上昇 → 業界に好影響も
アメリカでも拘束時間は1日最大14時間(日本は15時間)。
この義務化によって記録の信頼性が増し、労働時間に見合った報酬を要求する事業者が増加。結果として運賃が上昇しました。

さらに、「運送業は儲かる業種」という認識が広がり、新規参入が活発化したという報告もあります。

記録を正確に残すことが、業界全体の在り方を変える大きな一歩になるという好例です。
日本でも、同じようなポジティブな変化が起こることを願っています。

まとめ
運転日報は、単なる業務報告書ではありません。
「ドライバーの働き方」「業務改善」「労務管理」の全ての基盤となる、まさに“命綱”です。

まずは、自社でできる「記録の見直し」から始めてみてはいかがでしょうか。

 

中小物流事業者のための 物流業務の デジタル化の手引き

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