前回は運送業に対する「働き方改革関連法」の施行後に起こった具体的な影響、業界の対応、そして今後の課題について解説しました。
(前回の記事はこちら⋯2025年になって見た運送業の2024年問題 ― 施行後の現状と今後の課題)
今回は運送業の業務効率化についてです。
運送業が行っておく必要がある業務効率化策について、まずは「業務効率化」とはどういうことを指すのか確認します。
業務見直しや配車業務の効率化など、運送業界が直面する課題解決のヒントや実践例をわかりやすく紹介します。
効率化を進めることで、自社の競争力強化や成長を目指すための参考にぜひご活用ください。
業務効率化の定義(重要な4つの視点)
業務効率化とは、単に作業を早く終わらせることだけではなく、業務全体のプロセスを見直し、無駄を排除し、生産性を高める取り組みを指します。
特に運送業では、多岐にわたる業務が絡み合うため、効率化の効果が顕著に現れる分野でもあります。
ここでは、効率化を進める上で重要な4つの視点「ECRS」をご紹介します。
排除(Eliminate)
必要のない業務を取り除くことで、時間やリソースの無駄を削減します。たとえば、重複した記録作業や手動でのデータ入力を排除することです。
結合(Combine)
複数の業務を統合し、一つのプロセスにまとめることで、流れを簡素化します。配車計画と請求書発行のデジタル連携が一例です。
代替(Rearrange)
現状の手法を見直し、新しい方法や技術を導入して効率化を図ります。たとえば、配車システムや車両管理ツールの導入などです。
簡素化(Simplify)
業務フロー全体を見直し、業務設計からやり直す(システム化)ことです。納品先情報や作業マニュアル作成のデジタル化が一例です。
この4つの着眼点のことを英語の頭文字をとって「ECRS」と呼びます。
上記のE→C→R→Sの並びには意味があり、この順番で業務を見直していくと業務改善・業務効率化が上手くいくといわれています。
請求書送付を「郵送」から「メール」に切り替える業務効率化の例
最近の業務効率化の例として、請求書送付を「郵送」から「メール添付」に切り替える取り組みが挙げられます。
運送業でも請求書の送付方法を郵送からメール添付に切り替える会社が増えています。
これは「代替(Rearrange)」の成功例です。
従来の郵送方式では、印刷、封入、宛名記入、郵便手続きといった多くの作業が必要でした。
これをメール添付に切り替えるだけで、これらの作業がすべて不要になり、時間とコストの両方を削減できます。
DX化やデジタル化の波により、相手方の受け入れ態勢も整いつつあるようです。この流れを活かして取り組むべきタイミングではないでしょうか。
運送業における業務効率化を考える
運送業の業務効率化の話題では、特に「配車業務」が注目されます。以下は主な業務内容です。
(1)荷主や同業者からの依頼対応(受注業務)
(2)車両手配や配車計画の策定(交渉業務)
(3)協力会社との連絡(連絡業務)
(4)ドライバーの状況確認(確認業務)
運送業の業務は、人と人のコミュニケーションが多く、特に電話対応が頻繁に行われるのが特徴です。
つまり、個人対個人の業務が多いため、その回数が増えるほど時間を要し、電話の回数を減らせるかどうかが効率化の鍵となりそうです。相手と直接話さなくても業務が成立する方法があるかどうか、検討してみましょう。
(1)はメール発注や、大手荷主からのEDI発注なども業務に浸透してきました。この流れを活かし、デジタル受注をさらに拡大していきましょう。
(2)は協力会社さんとの交渉が主となるため、今後も電話でのコミュニケーションが継続する可能性が高いでしょう。
(3)は連絡が主となる業務のため、あらかじめ連絡フォーマットを定めることで、業務の簡素化が図れそうです。
(4)は電話対応の大半を占めるといわれています。配車係は、ドライバーの位置や状況を把握し、次の配車を行うために正確な情報を必要とするため、電話でのやり取りが多くなりがちです。しかし、車輌動態管理システムを導入すれば、確認のための電話の回数を大幅に削減できる可能性があります。
業務効率化を考える際には、それを実施することで何が削減・解消されるのかを明確にすることが重要です。この点が明確であれば、より大きな成果につながるでしょう。
運送業の業務効率化は、単なる時間短縮やコスト削減にとどまらず、長時間労働の是正が進み労働環境の改善や人手不足への対応にも繋がります。
小さな改善から始めて、運送業に特化した成功事例やツールを参考にしながら、一歩ずつ効率化を進めていきましょう。
(参考リンク⋯物流の2024年問題-全日本トラック協会)