前回までは、中小運送業の事務所内のデジタル化についてお話ししました。
https://app-logi.co.jp/column/applogi_column/7419/
今回は視点をトラック内に移し、デジタル化のポイントを検討していきたいと思います。
トラック内はIT機器の宝庫
まずはじめに、トラックの運転席を改めて見渡すと、多くのデジタル機器が装備されていることに気付きます。たとえば、「デジタコ」や「ドライブレコーダー」、「ETC」などが挙げられます。また、装備を充実させている企業では、「ナビゲーションシステム」も搭載されています。
さらに興味深い例として、ドライバーが伝票発行を行うために、プリンターをトラックの運転室内に設置している企業も存在します。
その上、車体にはエンジン系やブレーキ系の状態を監視するセンサーが充実しており、さらにタイヤには空気圧センサーが装着され、パンクしているタイヤを特定する仕組みもあります。加えて、今後整備される予定のFMSスタンダードにも期待が高まっています。
ちなみに、このFMSスタンダードとは、車両データへのアクセスが可能な新しい通信規格であり、ヨーロッパ圏の車両メーカーでは共通プロトコルとして使用されています。この規格を利用することで、安全管理、車両管理、運行管理に必要なデータをリアルタイムに収集し、その結果を分析してドライバーに伝達することが可能になります。
要するに、これによりトラックの運転席で独立して設置されているデジタル機器を一つのシステムとして統合し、管理することができ、現在の課題を大きく改善することに役立つと考えられます。このように、私もFMSスタンダードの普及に大いに期待しています。
(国交省資料: リンクはこちら)
リアルタイム性があるデジタル機器を活用する
次に、先端機器が装備されているトラック内の運転席ですが、最先端の機器と従来の機器とではどこが違うのでしょうか。結論から言えば、それはリアルタイム性です。たとえば、デジタコを取り上げてみましょう。
最新型のデジタコは運行データをクラウドサーバーにリアルタイムでアップロードでき、事務所ではそのデータをリアルタイムに閲覧できます。つまり、リアルタイムに指示が出せるということです。
一方で、従来のメモリーカード式のデジタコでは、ドライバーが帰庫してからデータをアップロードするため、当日の拘束時間や労働時間、休憩の取得状況などが帰庫後にしかわからないことが多くなります。したがって、これでは、2024年問題に代表される残業時間対応や、改善基準告示への対応が難しくなるでしょう。
これはドライブレコーダーでも同様です。クラウド対応のドライブレコーダーでは、ドライバーに異変が起こった際にリアルタイムで確認できますが、従来のものではデータを取り込んでからでないと状況がわからないためです。
最後に、2024年以降の運送業のマネジメントは分単位での管理が求められます。それに対応するためには、各種機器を適切に管理し、運用する必要があります。
まとめますと。
リアルタイム性がもたらす利点
- 労働時間の管理: リアルタイムで労働時間や休憩時間の状況を把握できることは、労働基準法の遵守や、ドライバーの健康管理にとって極めて重要です。特に、2024年問題が迫る中で、これらのデータをリアルタイムで管理することで、法令順守を確実にしつつ、効率的な運行計画を立てることが可能になります。
- 安全性の向上: ドライブレコーダーやデジタコなどのリアルタイムデータは、事故や異常が発生した際に即座に対処できるため、トラブルの早期発見と対応が可能です。また、データの分析により、潜在的なリスクを事前に特定し、安全運転を促すフィードバックをドライバーに提供することもできます。
- 車両管理の効率化: FMSスタンダードをはじめとする新しい通信規格の導入により、車両の状態を一元管理できるようになります。これにより、車両のメンテナンスが計画的に行われ、故障の予防や運行効率の向上が期待できます。
課題と今後の展望
- コストの問題: 先進的なデジタル機器を導入するには、初期投資が必要です。中小企業にとっては、このコストが大きな負担となる場合があります。そのため、機器の導入に際しては、補助金や税制優遇措置の活用を検討することが重要です。
- データの活用方法: リアルタイムで収集される膨大なデータをどのように活用するかも課題です。データを有効に活用するためには、専門的な知識や分析ツールが必要となるため、データ分析のスキルを持った人材の育成や、外部の専門家の支援を受けることが求められます。
- ドライバーの負担軽減: デジタル機器の導入によって、逆にドライバーに新たな負担が増えることも懸念されます。例えば、機器の操作やデータの確認作業が増えることで、運転業務に支障が出る可能性があります。そのため、デジタル機器の導入に際しては、ドライバーの負担を軽減するための使いやすさや、研修の実施が必要です。
まとめ
トラック内のデジタル化は、運送業の効率化と安全性の向上に不可欠です。特に、リアルタイム性を持つデジタル機器の導入は、これからの業界にとって大きなメリットをもたらします。しかし、その一方で、コストやデータ活用の課題もあります。これらの課題をクリアするためには、業界全体での協力や、技術革新に対する柔軟な対応が求められます。