前回、前々回のコラムでは、「デジタル運転者台帳」と「デジタル車両台帳」について事例を踏まえてお話ししました。
https://app-logi.co.jp/column/applogi_column/7395/
繰り返しになりますが、デジタル化(DX化ではありません)によるメリットは、①書類(データ)の「保管効率」が上がり、②一箇所を変更するとすべてが変更される「編集効率」も上がり、③必要な情報にアクセスしやすくなる「検索効率」が上がることです。やらない理由はありませんね。
今回は「納品先カルテ」のデジタル化について考えてみたいと思います。
納品先カルテは運送会社の品質を一定に保つ書類
納品先カルテは、納品先ごとに道順、納品可能時間帯や納品時のルールなどをまとめたもので、その納品先の要望に対応できるための自社のノウハウが凝縮されたものです。私の経験則からすると、30%〜40%の運送会社で作成されているのではないでしょうか。
イメージは以下のようなものです。
この例は、事務所の方がエクセルやワード等で作成した後、プリントアウトし、その後でよく行くドライバーさんが地図を書きこんでくれたもので、なかなかの大作です。ここに記載されている項目は以下のようになっています。
- 納品先名
- 納品先の担当者名
- 納品不可の車格
- 必要装備(ラッシングベルトや角あてやコンパネなど)
- 導入路
- 納品場所地図
- 納品時の注意事項
他にも必要な項目は個社ごとにあると思いますが、必要かどうかの判断軸は、初めて納品に行くドライバーがその納品先カルテの内容を見て納品ができるか、つまり引き継ぎができるかということです。このサンプルの納品先カルテは、その観点から非常によくできています。しかし、手作成ゆえの問題もあります。
すぐに変更できない資料は更新頻度が低い
納品先の住所が変わったなどの大きな変更はすぐに対応されることが多いですが、細かい変更、例えば納品時の積み降ろしのルールが変更になった、担当者が変わったなどの場合は、
- ドライバーが聞いていたが配車担当に伝えるのを忘れていた
- ドライバーから配車担当には変更内容を伝えていたが、納品先カルテを変更するのを忘れていた(面倒なのでまとめて変更しようとしていた)
- 変更はしていたが印刷するのを忘れていた
といった理由でカルテの内容は最新版でないことがよくあります。ドライバーも「本当にこれで正しいのか?」と感じてしまうことから、よく行くドライバーに聞いたほうが早いということになります。
最悪な事態は、いつも行っているドライバーが急に辞めてしまったときです。急遽行くことになったドライバーは納品方法がよくわからず、時間もロスし、クレームも発生し、納品品質が低下してしまうことです。納品先カルテが編集しやすい状態であれば、これを防ぐことができますが、手作りの書類では難しいですね。
デジタル化で更新頻度を上げる
前述の「ドライバーが納品したルールに変更があるごとに、すぐに納品先カルテを編集する」ことを実現するためには、編集しやすい状態が必要です。市販のクラウドドキュメントのアプリケーションを使用するとよいでしょう。これを使うことで、ドライバーはスマートフォンなどで納品先カルテにアクセスできるようになります。
ドライバーとしても、納品の直前に改めて納品方法などを確認するときに便利です。よく行くドライバーに入口を聞いたけど、近くまで来たらわからなくなったときにも使えます。納品ルールが少し変更になったときにも、メモを残しておくことができます。
以下はサンプルです。
PC版
スマートフォン版
このサンプルでは、
- 入り口と駐車位置を分けて地図に掲載
- 写真とその写真の説明を簡単に記載
- 納品ルール・注意事項を投稿型で記載
- 事故・クレームも同様に
- 伝達事項は掲示板に投稿
といった内容を掲載しています。またスマートフォンで見やすくしているのがポイントです。これで編集効率・検索効率が高まり、よい納品先カルテが運用できそうです。
PDFで作成された納品先カルテをスマートフォンで見るパターンもありますが、編集効率の観点からいつも最新版にすることが難しいので課題が残ります。ドライバーが積極的にカルテを更新してくれるかが課題ですが、投稿数を評価項目にしている運送会社もあります。ここは知恵の出しどころですね。
いずれにしても、情報共有をするにあたっては何でもできるすごい時代ですね。