前回のコラムでは「デジタル化」と「DX化」の違いについて考察しました。
https://app-logi.co.jp/column/applogi_column/7378/
重要度は最高レベルに近いですね。しかし、いきなり社内をDX化しようというのはハードルが高いので、まずは社内業務をデジタル化していくことを運送業に特化して考えてみたいと思います。
運転者台帳をデジタル化する
おさらいですが、デジタル化はアナログデータ、つまり紙媒体を使用した業務をデジタル媒体に置き換えることを指します。デジタル化することによって、データの保管効率、編集効率が上がり、何より検索効率が上がります。その先に、全てがデータでつながり業務が抜本的に変わっていくDX(デジタルトランスフォーメーション)があります。
デジタル化といっても何から進めていくべきでしょうか?運送業の事務所内で考えてみたいと思います。まずはじめに思い浮かぶのは「運転者台帳」です。これは、いわゆるトラックの運転者の名簿で、貨物自動車運送事業輸送安全規則第20条第1項第13項によって「運転者台帳を作成し、営業所に備え置くこと」と義務付けられています。一般的な会社では「労働者名簿」というものを作成しなければいけませんが、運送業の場合はさらに独自のものが必要になります。特にフォーマットなどは決まっていないため、各企業が独自で作成している場合が多いようですね。
記載しなければいけない内容は決まっています。
- 作成番号及び作成年月日
- 事業者の氏名又は名称
- 運転者の氏名、生年月日及び住所
- 雇入れの年月日及び運転者に選任された年月日
- 道路交通法に規定する運転免許に関する次の事項
- 運転免許証の番号及び有効期限
- 運転免許の年月日及び種類
- 運転免許に条件が付されている場合は、当該条件
- 事故を引き起こした場合の概要
- 運転者の健康状態
- 指導の実施及び適性診断の受診の状況
- 運転者台帳の作成前6か月以内に撮影した単独、上3分身、無帽、正面、無背景の写真
また、企業ごとに3年間の保管義務があります。この運転者台帳、紙ベースだと現場で運用するのは結構大変で、免許証が更新されるたび、所属事業所が変わるたび、事故が発生するたび、適性診断や安全教育を行うたびに(本来)更新しなければいけません。一年に一回の健康診断の際は事務所の担当の方は大変でしょうね。
人事管理でも、誰がどの免許を保有しているのか?運転免許証の有効期限は有効なのか?指導や適性診断の受診状況はどうなっているのか?など、紙ベースだと知りたい情報にすぐにアクセスできないため大変です。運転者台帳に内容が記載されており、データとして一括管理されていれば、上記の管理は難しいものではありません。例えばスプレッドシートに、1行に一人の情報が横並びになっていて、絞り込みをすればすぐに知りたい状態が取得できる状態になります。
改めて考えてみると、運送業の社内書類でデジタル化したほうがよい重要度は高いものといって良いでしょう。ちなみに当社でも「デジタル運転者台帳」というアプリケーションをリリースしているのですが、アクセス頻度がかなり多くあります。やはりよく使う書類のようですね。
心配なのは、紙ベースで保管しておかないといけないのでは?ということです。所定管轄省庁に確認したところ、デジタル媒体に保管しているものであっても、すぐにアクセスできる状態にあるのであれば問題ない、という見解でした。
法的根拠からは、運転者台帳の作成・保存は、「国土交通省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則」(平成17年国土交通省令第26号)第3条第1項及び第5条第1項の規定により、
https://www.mlit.go.jp/pubcom/05/pubcom12/01.pdf
書面の作成・保存に代えて運転者台帳に係る電磁的記録の作成・保存を行うことができる、という項目がこれにあたるようです。
つまりデジタル化してもよいと判断しても良さそうです。しかしながら各地域トラック協会の見解も都道府県ごとに違うようなので、地域ごとに確認しておいたほうが確実ですね。どうあれ、いつでも印刷できる状態にしておけば問題はなさそうです。
今回は運転者台帳のデジタル化についてでしたが、保管効率、編集効率、検索効率が上がることで業務全体の効率が上がる帳票であれば、今回のお話の内容は当てはまりそうですね。