コラム

2025年になって見た運送業の2024年問題 ― 施行後の現状と今後の課題

運送業の2024年問題 ― 施行後の現状と今後の課題

「働き方改革関連法」が2024年4月に適用、業界に大きな変革

 

2019年4月に施行された「働き方改革関連法」は、運送業界に対して5年間の猶予期間が設けられていました。しかし、2024年4月にこの法律が正式に適用され、運送業界に大きな変革がもたらされました。

長時間労働が常態化していた業界において、ドライバーの労働環境改善が必須となり、日本の物流全体の持続可能性が問われる事態になっています。

知っていますか?物流の2024年問題-全国トラック協会

実際に法律が適用されてから約9か月が経過した現在、業界では様々な影響が顕在化しています。本記事では、施行後に起こった具体的な影響、業界の対応、そして今後の課題について解説します。

 

前回の記事はこちら、
中小運送業がこれだけはやっておきたいデジタル化策について:その⑤リアルタイム性をもった機器の導入


2024年問題が運送業界に与えた主な影響

1. 残業時間の上限規制による輸送力不足
「働き方改革関連法」の適用により、ドライバーの年間時間外労働の上限が960時間に制限されました。
多くの長距離ドライバーは月100時間以上の時間外労働が当たり前だったため、新規制の適用後、多くの運送会社でドライバーの労働時間を短縮せざるを得ない状況になりました。
結果として、トラックの稼働時間が減少し、輸送力の低下が発生しています。

特に影響が大きいのは、中小規模の運送会社です。
大手企業は事前に業務の効率化を進めていたものの、中小企業では人手不足の影響を強く受けており、一部の運送会社では受注の制限や事業縮小を余儀なくされるケースも増加しています。


2. 運賃の上昇と荷主との交渉 2024年問題により、輸送能力が低下したことで、運賃の見直しが進んでいます。
ドライバーの労働時間が制限された結果、企業側は人件費の増加分を運賃に転嫁する必要が生じました。

一部の荷主は運賃引き上げを受け入れましたが、いまだに価格交渉が難航するケースも少なくありません。
特に、長年の価格競争によって低価格が定着していた業界では、適正な運賃設定が大きな課題となっています。

運賃の引き上げに対応できない場合、一部の運送会社は採算が取れず、撤退や倒産するケースも出始めています


3. ドライバー不足がさらに深刻化 長時間労働の是正はドライバーの健康を守るために必要な改革ですが、一方で給与の減少を招く要因にもなっています。
残業規制によって労働時間が短縮された結果、手取り収入が減り、業界を離れるドライバーが増えているのです。

2025年1月現在、国土交通省の統計によると、運送業界の人手不足はさらに深刻化しており、一部の地方では荷物を運べない「輸送難」が発生しつつあります。


業界の対応策:物流DXの活用が鍵

輸送力不足やドライバーの負担軽減を図るため、業界では**「物流DX(デジタル・トランスフォーメーション)」**の導入が加速しています。
主な取り組みとして、以下のような技術が注目されています。

  • トラック動態管理システム:運行状況をリアルタイムで把握し、効率的なルート選定を実施
  • AIを活用した配車システム:積載効率を最大化し、無駄な空車走行を削減
  • 自動運転トラックの試験運用:一部の大手物流企業では、高速道路での隊列走行(トラックプラトーニング)を実施
  • 貨物のモーダルシフト:トラック輸送から鉄道・船舶輸送への転換

これらの施策は、ドライバー不足を補い、労働時間を短縮しながらも輸送効率を維持するための重要な鍵となっています。


今後の課題と展望

2024年問題が実際に発生して約9か月が経過した今、運送業界は大きな変革期を迎えています。しかし、まだ多くの課題が残されています。

  1. 適正な運賃設定の確立
    運送業の持続可能性を確保するためには、荷主側も「適正運賃の支払い」に協力する必要があります。
    今後は、国を挙げて適正運賃を確保するための規制や補助が必要になるかもしれません。
  2. ドライバーの待遇改善と新規採用の促進
    労働時間が短縮されたことで収入減が発生していますが、基本給の引き上げや手当の拡充が求められています。
    また、ドライバーの高齢化が進んでおり、新規人材の採用促進が急務となっています。
  3. 物流DXのさらなる推進
    デジタル技術を活用した省人化・効率化を進めることが、長期的な解決策となります。
    特にAIや自動運転技術の進展が期待されており、今後の業界動向に注目です。

まとめ

「運送業の2024年問題」は、労働環境の改善という本来の目的を達成しつつも、輸送力不足や運賃の問題、人手不足といった新たな課題を生んでいます。
業界全体が連携し、適正な価格設定・労働環境の改善・DXの活用を進めることが不可欠です。

2025年以降、これらの課題にどう対応するかが、日本の物流の未来を左右する重要なポイントとなるでしょう。

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